古気候の高解像度復元を目的として,琵琶湖湖底コアを用いて珪藻殻濃度(valves g-1)および年間珪藻殻堆積量(valves cm-2yr-1)を,数百年オーダーの高解像度で分析した.年間珪藻殻堆積量は完新世と最終間氷期に多く,最終氷期ではいくつかの増加期が認められるものの,比較的少ない.また,過去14万年間において珪藻殻堆積量には,千年オーダーの短周期変動が顕著に認められる.珪藻殻濃度および年間珪藻殻堆積量の変化をもたらす要因について検討した結果,珪藻生産量の変化を通じて,降水量を間接的に反映している可能性が示された.年間珪藻殻堆積量を降水量のプロキシとみなすと,完新世(0~7ka)と最終間氷期(68~135ka)では,降水量は現在のレベル以上であり,最終氷期(12~68ka)には現在の降水量レベル以下の期間が多い.特に,酸素同位体ステージ4では,降水量の減少期が1万年以上継続し,LGM期に比べても減少期が長かったと考えられる.珪藻殻堆積量とGRIP氷床コアの酸素同位体比における千年オーダーの変動パターンはよく類似しており,過去14万年間の日本の降水量とグリーンランドの気温との間で,気候上のテレコネクションがあったことが示唆される.