第四紀研究
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日本海中部大和海盆から採取された酸素同位体ステージ3に噴出した3枚の火山灰
池原 研吉川 清志Jong-Hwa Chun
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2004 年 43 巻 3 号 p. 201-212

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抄録

日本海中部大和海盆から採取された堆積物コア中に挾在する火山灰のうち,姶良-丹沢火山灰(AT)と阿蘇4火山灰(Aso-4)の間に産し,従来富山沖(To),山陰1(SAN1),鬱陵-大和(U-Ym)火山灰と呼ばれていた3枚の火山灰について,火山ガラスの諸特性をまとめた.また,3層準での浮遊性有孔虫を用いた放射性炭素年代測定結果とあわせて,その起源と噴出年代を考察した.その結果,以下のことがわかった.富山沖火山灰の火山ガラスの屈折率,主成分・微量成分化学組成は,その給源火山が白頭山であることを示した.その年代は48~51kaである.また,この火山灰は白頭山-日本海盆火山灰(B-J)に対比されると考えられる.山陰1火山灰は,火山ガラスの主成分化学組成から大山火山起源と推定され,Toとの層位的関係から53~55kaの噴出年代が推定できることから,大山倉吉軽石(DKP)に対比される可能性が高い.鬱陵-大和火山灰は,その噴出年代がAT-To間の堆積速度を外挿して求めると62~64kaとなり,AT-Aso-4間の堆積速度を一定として考えられてきたものよりも古い年代値が得られた.今回得られた年代から,大和海盆の平均堆積速度は酸素同位体ステージ3の中・後期(AT-To間)とステージ3の前期から5の後期(To-Aso-4間)までの期間で異なり,前者では後者よりも遅かったと考えられる.これは気候・海洋環境変化による細粒堆積物の供給量の変化を反映している可能性がある.

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