第四紀研究
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北海道東部,涛沸湖岸における完新統の堆積環境と相対的海水準高度の推定
佐藤 裕司松田 功加藤 茂弘松原 尚志
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2004 年 43 巻 6 号 p. 447-455

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抄録

北海道東部,涛沸湖沿岸において,貝類遺骸を多数含有する完新統の堆積物コアを採取した.貝類遺骸群集中には,現在本州以南に分布するウネナシトマヤガイ(Tropegium(Neotrapezium)liratum)が含まれ,その14C年代測定の結果から約3,300yrs BPの生息記録が得られた.堆積物中のイオウ含有量,珪藻遺骸群集,そして貝類遺骸群集にもとづき堆積環境を推定した.堆積物中のイオウ含有量と珪藻遺骸群集を指標に,認定された海成層の上限(マリンリミット)は,標高+0.30mであり,貝類遺骸群集が示す上限(標高-0.23m)に比べて高く,その間には0.53mの差異が認められた.干潟に特徴的な珪藻の環境指標種と貝類遺骸の出現から,相対的海水準高度として標高-1.40m(3,320±60yrs BP)と-0.23m(1,290±60yrs BP)が推定された.この旧海水準記録は,これまでオホーツク海沿岸の低地から報告された完新世後期の海水準に比べて低く,このことは当該調査地点の相対的な沈降を示すと考えられる.

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