地すべりなどのマスムーブメントは,山地地域の地形発達に大きな役割を果たしている.小論は,山地の地形発達を明らかにする観点から,山形県白鷹火山中腹および蔵王火山北西山麓に残る巨大山体崩壊起源の地形について,それらの移動・堆積域に発達する凹地・湖沼堆積物を採取した.そして,それら堆積物中のテフラの対比から,初生的なマスムーブメントの開始時期を明らかにした.白鷹・荒沼堆積物からは12層,蔵王・酢川泥流による閉塞で発達した旧久保手湖堆積物からは,2層の後期更新世テフラが見いだされた.荒沼堆積物最下部からは,岩屑流堆積物を覆ってOn-Ng(ca.80ka)が発見された.旧久保手湖堆積物の中部および下部層からは,Ad-N1およびNm-Knが発見された.これらのテフラ層から,白鷹火山の崩壊にともなう荒沼の形成は,遅くともMIS 5の前半に起こったものと考えられる.旧久保手湖は,堆積物の厚さと堆積速度から外挿して,MIS 4はじめに形成されたと考えられる.