第四紀研究
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阿波池田付近の中央構造線の新期断層運動
岡田 篤正
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1968 年 7 巻 1 号 p. 15-26_2

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抄録

(1) 馬路川から,池田町・三好町・三野町にかけての,内帯和泉層群と外帯三波川結晶片岩とを境する中央構造線池田断層は,ほぼN75°Eの走向を保って,ほとんど一直線に延びる.断層面の傾斜は50°~80°Nである.従来指摘されていたような低角の衝上断層は調査地域内では認められなかった.それに似た現象はないわけではないが,いずれもその上盤側の岩石は地辷りないし土石流堆積物と考えられるものである.
(2) この断層に沿うて各所で段丘面が切断変位している.地形と断層破砕帯の観察から判断すると,変位は右横ずれであり,それに伴う垂直変位は一様に北側の相対的隆起である.そして,この断層運動は少くとも,段丘形成期以降においては,一定方向に累進的に継続している.
(3) 断層運動のベクトルは次のようである.阿波池田市街地西端:約3万年の期間内での水平変位量,約200mないしそれ以上,垂直変位量約50m.東州津箸蔵扇状地:1万年より新しい期間内での水平変位量約45m,垂直変位量5~8m.東州津西谷川:水平変位量約50m,垂直変位量7~9m.足代付近:水平変位量約70m,垂直変位量約15m.
(4) 段丘面形成期以降における断層運動の速度については,吉野川北岸の他の地域でも研究中であるが,従来知られている日本の活断層[例えば,丹那(久野1936)・阿寺(杉村・松田1965・他)・跡津川(松田1966)断層等]のどれよりも大きいものと予測される.

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