本研究はメラトニンと象牙質における成長線の周期性との関連を解明し,その作用機序を探ることを目的とした.対照群とメラトニン投与の低濃度群及び高濃度群の3群に分けて実験した.研究は①5日令の歯根形成期の夜間と次の日の6日令の昼間及び②7日令の昼間と次の日の8日令の夜間の試料を用いた.低濃度群では濃染層の幅が広がり,淡染層の幅が狭くなっていた.高濃度群では成長線の間の淡染層は認められなかった. 低濃度群や高濃度群では象牙前質に石灰化球が数多く観察された.メラトニン投与濃度が上昇するにつれて象牙前質中の石灰化球の数と大きさは有意に増加していた.メラトニン投与群では,切歯と臼歯の歯冠象牙質の中央部に新しい成長線が観察された.SEM-EDS分析では,CaとP含有量がメラトニン投与群で増加していた.メラトニンが象牙芽細胞の石灰化周期とコラーゲン分泌周期を促進し,成長線の形成機構に影響されたと考察される.