日本テスト学会誌
Online ISSN : 2433-7447
Print ISSN : 1880-9618
事例研究論文
センター試験における大学合格率の停滞現象
―自己採点による出願先の主体的選択が生み出す受験者の分散配置―
内田 照久鈴木 規夫橋本 貴充荒井 克弘
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2018 年 14 巻 1 号 p. 17-30

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抄録

センター試験を受験して 国公立大学に出願した高校新卒者について,5 教科の合計得点に対する大学の合格率を分析した。その結果,得点率が中上位の層では,得点が高くなっても合格率が上がらない,という「合格率の停滞現象」が見出された。その原因の検討のため,大学の学部ごとに合格者の成績から難易度を算出し,各募集単位を高・中・低の3 つのグループに分割した。このグループ別の分析では合格率の停滞は見られず,得点が高くなると合格率は滑らかに上昇していた。ここで合格率の逆数は競争倍率なので,合格率が停滞している範囲では,「競走倍率の平準化」がなされていることになる。大学出願時には,センター試験の自己採点の結果 と,大学・学部の難易度を照らし合わせることで,出願先がシフトする。それによって,競争倍率の平準化が促進される。したがって,受験者の私的な自己採点結果の利用は,マクロに捉えた場合には,受験者を分散配置する社会的なフィルタとしても機能している可能性がある 。

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