日本テスト学会誌
Online ISSN : 2433-7447
Print ISSN : 1880-9618
事例研究論文
PISA2015 における探究型教授法が理科の到達度に与える因果効果の検討
菱山 完岡田 謙介
著者情報
ジャーナル オープンアクセス

2019 年 15 巻 1 号 p. 135-148

詳細
記事の1ページ目
抄録

探究型教授法は学習を促進する効果があるとされ,特に理科の授業において近年行われるようになっている。しかしながら,探究型教授法の到達度に及ぼす効果についての知見は必ずしも一貫しておらず,効果的であるとする結果もあれば,そうではないとする結果もある。本研究では,OECD 生徒の学習到達度調査 (PISA) 2015 年版の我が国のデータを用い,一般化傾向スコアを用いた分析によって,探究型教授法が理科の到達度に及ぼす因果効果を検討した。PISAの質問項目から,生徒が受けた探究型教授法のレベルを5 段階に分類し,これを処遇変数とした。そして,38 個の共変量を用いた多項ロジスティック回帰によって一般化傾向スコアを推定した。その後,逆確率重み付け推定量を用いて各レベルの理科の到達度の周辺期待値の推定を行った。結果として,探究型教授法を中程度に受けた群において到達度が最も高くなり,それ以上では逆に到達度が低下した。この知見は前回調査時の先行研究とも概ね一致するものである。探究型教授法の適度な取り入れは到達度に対して正の因果効果を与えるものの,過度に行うと逆に負の因果効果を持ってしまう可能性がある。

著者関連情報
© 2019 日本テスト学会
前の記事 次の記事
feedback
Top