2019 年 29 巻 1 号 p. 36-48
社会的・組織的な現象や問題を理解し,システムのデザインへ繋げるための手法として,エージェント・モデルとケーススタディを接地させるアプローチが提唱されている.本稿では,当該接近法がより実効性を持つよう,以下の2点を拡張した方法論を提案する:a)個々のエージェントの行動の詳細な記録を指すミクロ・ログではなく,ミクロ・ログの類型を対象とした分析を行うこと,b)抽象的記述言語を用い,ケースにかかわる解釈を自然言語と比べて形式的に記述すること.提案手法の要件が満たされることの例示のため,組織の外部環境認識にかかわる意思決定プロセスを表現するエージェント・モデルを構築し,同様の主題を持つビジネスケースとの接地を行った.示されたことは以下の通り:1)網羅的なシミュレーションを行うことで,意思決定プロセスを類型化し,それらの蓋然性にかかわる議論を行いうること,2)シミュレーションのログと実際のビジネスケースをケース記述言語により同じ形式で表現し内容の比較対照を行いうること.