2019 年 29 巻 1 号 p. 10-17
本稿では,シミュレーション&ゲーミング研究と実践を行ううえで生じるいくつかの問題について,とりわけゲームの質と倫理に関する問題について,検討した.筆者がなぜこのような問題意識を持つようになったかについては,自身のゲーム体験が影響しているので,その私的な研究史も含めつつ,議論を進めた.最初にごく私的なゲーム史を紹介したうえで,ゲームを教育に活用しているユーザーの立場で注意していることについて紹介した.次に,ゲームを制作・提供した立場から注意している点について紹介した.これらの議論を踏まえ,学会としてゲーム研究及び実践のための行動規範ないし倫理規程の必要性があることを,吉川(2007)に引き続き主張した.いくつかの点については,本稿で挙げた具体的な事例をもとに,筆者が本学会で議論したい論点を3つあげた.