シミュレーション&ゲーミング
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査読論文
個人の態度が社会における行動の採用率に及ぼす影響:ローカルとグローバルな相互作用に着目して
出口 拓彦
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2020 年 30 巻 1 号 p. 37-44

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抄録

ある行動に対して個人が持つ態度が,集団や社会におけるその行動の採用率に及ぼす影響について,限界質量モデルを用いて検討した.個人の態度は「社会的感受性」と呼ばれる値で表され,他者の採用率が社会的感受性で示された割合(%)以上になった場合,自らも同じ行動をする.例えば,社会的感受性が0の者は,その行動を採用する者が周囲にいなくても,これを採用する.一方,100を超える場合,自分以外のすべての者が採用しても,自分は採用しない.社会的感受性の値や,その分布の形(一様分布か正規分布)を変化させ,複数のデータセットを作成した.そして,個々人が知覚可能な範囲について,「グローバル」「ローカル」条件の2つ設定した.前者では,各個人はその社会にいるすべての者の行動を知ることができる.一方,後者では,自分に隣接する者の行動しか知ることができない.セル・オートマトン法によるシミュレーションを用い,両条件間の相違を分析した.その結果,ローカル条件の方が行動変容は起こりにくい傾向が示された.特に,①社会的感受性が0の者の割合が低い,②社会的感受性が100を超える者の割合が低い場合,この傾向は顕著となった.しかし,社会的感受性が正規分布する場合,ローカル条件の方が行動変容は生じやすくなる可能性があることも示された.

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© 2020 特定非営利活動法人日本シミュレーション&ゲーミング学会
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