自由化されたエネルギー市場では,価格競争が新技術への投資を鈍らせるため,化石燃料から再生可能エネルギーへの転換という社会全体の長期的な利益が,個々の事業者の短期的な利益と対立する.本研究は,この長期的な投資と短期的な競争とのジレンマ状況において,エネルギー事業者の主観的現実がエネルギー転換の進捗に与える影響を調べる.この目的のため,競争的なエネルギー市場を模擬するマルチプレイヤーゲームをデザインし,実験協力者によるゲームプレイと質問紙調査を行った.両者の分析結果から,エネルギー転換が進まないゲームには,競争的な世界観が共有されて実際に競争が起きるゲームと,協調的な世界観が共有された市場でフリーライダーが独占を進めるゲームの2種類があることが示された.このことから,エネルギー転換を進めるためには,新技術を優遇してフリーライドを防ぐ政策だけでなく,価格競争の激化を抑える政策も同時に必要であることが示唆された.