シミュレーション&ゲーミング
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日本における社会システム・ゲーミングの創始:総力戦研究所の演練
市川 新
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2020 年 30 巻 1 号 p. 11-22

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抄録

本稿の題名の演練とは,昭和16年6月頃から11月頃にかけて,すなわち,1941年に研究され計画され実施された社会システム・ゲーミングを示す.演練は,当時の軍事用語であるが,現代用語では,ゲーミング・シミュレーションに相当しよう.演練は,当時の官僚を中心に33名の若手エリートによる政策研究ゲーミング,あるいは当時の大日本帝国の運命を研究する国家戦略研究ゲーミングともいえる.その構造と内容について,現在までにわかったことについて報告する.なお,近衛内閣直轄の総力戦研究所における演練が現代における社会システムのゲーミング・シミュレーションの原型でないかと思われる.戦後,この演練が最初に文献に現れたのは1950年後半のアメリカのランド研究所の報告であり,その研究員らが戦争ゲームとして分類していた.1941年の当時に,日本でこのような社会システム・ゲーミングが実施されていたとは理解できなかったのではないかと推測される.そればかりか,このゲーミング・シミュレーションが,政策科学における世界最初の創始となるのではないかと思っている.

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© 2020 特定非営利活動法人日本シミュレーション&ゲーミング学会
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