2021 年 31 巻 1 号 p. 38-49
格差のある集団間において,集団を超えた全体への協力を実現する過程を明らかにすることを目的に,本研究では,地球規模の環境問題を軸に,集団間の葛藤と協調をシミュレートした仮想世界ゲームを用いて検討した.共通運命の認識に着目し,共通運命の認識は話し合いにより形成され,協力することの受容を促進するという要因連関を検討した.また,個人単位だけではなく集団単位の分析も行うことで,共通運命の認識が集団ごとにどのように表象が異なるかを検討した.仮想世界ゲームを10ゲーム実施した.その結果,共通運命の認識は,集団間の話し合いに影響され,全体への協力を促進していた.また,集団ごとの表象を見たところ,全体の共通危機である環境問題発生後に共通運命の認識や協力が高まった地域が多かったが,共通運命の認識が高まらず協力に至らなかったゲームや地域もあり,こうしたゲームでは企業間競争が激化した例や,一方的に環境に配慮しない地域が生じた例など,ゲーム展開により異なることも確認された.