大学における発達障害学生への支援は、学生相談機関が中心であったが、差別解消法の施行後、社会モデルに基づく「障害学生支援」の要素が新たに加わったことで、大学がどのように体制を整備し、組織化するのか、発達障害学生への個別支援をどのように実施するのかが喫緊な課題となっている。そこで、中規模大学の支援組織における約8年間の発達障害学生への支援に関する実践事例に基づいて、発達障害学生支援の充実化のプロセスを分析し、発達障害学生支援のあり方について検討した。その結果、支援組織が、大学組織の中で社会モデルに基づく支援の制度化に関与し、大学構成員に対して教育活動・啓発活動・情報発信活動を実施し、支援ネットワークを構築し、組織間連携を強化することで、発達障害学生への支援体制は、支援組織が中心となる体制から、大学組織として全学的に支援する体制へ至った。また、発達障害学生の修学環境が整備されていったことで、発達障害学生の支援では、支援組織が「カウンセリング機能」と「コーディネート機能」を組み合わせ、全学的に対応していく重層的支援が可能となった。