災害情報
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記録的短時間大雨情報の変遷及び災害発生率
向井 利明牛山 素行
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2018 年 16 巻 2 号 p. 163-178

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抄録

気象庁の記録的短時間大雨情報は、大雨警報発表中に、数年に一度程度しか発生しないような短時間の大雨を観測又は解析したときに市区町村名等を示して発表されるもので、1983年に運用が始まった。その発表基準や運用等はたびたび見直されているが、気象庁はこの情報について一貫して、「現在の降雨がその地域にとって災害の発生につながるような稀にしか観測しない雨量であることを知らせるもの。」と説明している。一方、「避難勧告等に関するガイドライン」(内閣府)では、土砂災害に対する避難勧告等の判断に活用する情報の1つとしてこの情報が位置付けられている。しかし、記録的短時間大雨情報の業務的な変遷を纏めたものやこの情報が発表された際の災害発生率等について定量的に調査されたものはない。

本稿では、記録的短時間大雨情報の業務的な変遷を振り返るとともに、記録的短時間大雨情報が発表された事例について、市町村ごとの災害発生率等を調査し、防災情報としての役割等を考察した。記録的短時間大雨情報の対象となった市町村の61.6%で浸水害又は土砂災害が、大雨警報(土砂災害)と記録的短時間大雨情報が発表された市町村の43.5%、土砂災害警戒情報と記録的短時間大雨情報が発表された市町村の49.8%で土砂災害が発生していた。記録的短時間大雨情報は雨量の実況を知らせるものであるが、大雨警報を補足する防災情報としての一定の役割を果たしていると考えられる。

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© 2018 日本災害情報学会
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