災害情報
Online ISSN : 2433-7382
Print ISSN : 1348-3609
[論文]
住民の防災対応に関する行政依存意識が防災行動に与える影響
片田 敏孝木下 猛金井 昌信
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2011 年 9 巻 p. 114-126

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抄録

本稿では、個々の住民単位の防災行動が不十分である原因として、防災対応に関する行政依存意識に着目し、住民の防災対応に関する行政依存意識が防災行動の実施状況に与える影響について実証した。そして、防災の現場で、住民の行政依存意識を払拭し、具体的な対応行動の実行を促すことが求められていることを踏まえ、そのような行政依存意識が形成された社会的背景について考察し、それを踏まえた今後の対策の方向性を提案した。

まずアンケート調査結果より、行政依存意識の高い住民は、防災対応に関する様々な役割を行政が担うべきと考えており、洪水HMの閲覧や非常持ち出し品の準備などの行動を行っていないことが確認された。そして、住民の防災対応に関する行政依存意識が形成されてきた社会的背景については、わが国における行政主導の防災対策の推進に伴う弊害として顕在化した問題であるとの指摘を行った。以上の考察を踏まえ、今後、災害犠牲者をさらに減少させるためには、“受け身の自助意識”ではなく、防災対応に関する行政依存を払拭し、“主体的な自助意識”の形成を促し、“災いをやり過ごすための知恵”を持つことの必要性を提案した。

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© 2011 日本災害情報学会
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