1994 年 50 巻 7 号 p. 509-520
一般に、健聴者でも加齢により、伝音系の機能劣化のほかに、聴覚経路全般にわたって機能劣化が生じる。その結果、語音識別速度が低下し、早口で話された音声に対して、音は聞こえているが分かりにくいという症状が見られる。そこで今回、このような高齢者にも良好な音声放送サービスを行うことを目的とし、早口で話された音声をピッチや個人性を保つたまま話速のみを、ゆっくりした音声に高品質かつリアルタイムで変換できる補聴システムを試作した。このシステムの特徴は従来の補聴器とは全く異なり、聴覚経路全般の機能劣化に伴う「聞こえにくさ」を補償することにある。