日本音響学会誌
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ロードセルを用いた重量計測での不要振動除去に最適なFIRフィルタの設計
上村 久仁男金井 浩中鉢 憲賢
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1995 年 51 巻 11 号 p. 845-853

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抄録

本論文では、ロードセルを用いた高精度重量計測におけるロードセルの不要振動除去に最適なFIRフィルタの設計方法について述べる。通常、雑音を含んだ入力から雑音のみを除去するフィルタを設計する場合、まず検出したい信号に対するノイズ成分の周波数特性を決定し、次にその特性を実現するフィルタ次数と係数が決定される。この方法を用いて重量計測の誤差の評価を行った前報の結果では、FIRフィルタは、直線位相特性であるため波形歪が発生しないので、IIRフィルタよりも分散の少ない計量測定精度が得られることが分かった。しかし、ハミング窓関数を用いたFIRフィルタについては150次以上が必要であるために低速ライン処理での計測にしか適用できない。従って、本論文では少ないタップ数で高精度計測が可能となるFIRフィルタを設計することを目的とした。フィルタの設計方針としては、通常の設計法のように周波数特性をあらかじめ与えるのではなく、重量算出に関係する測定区間においてのみフィルタ出力が平坦であれば良いことに着目して、その測定区間におけるフィルタ出力と真の重量との差の2乗和を真の重量で正規化した正規化評価関数Jを定義し、正規化評価関数が最小になるようなFIRフィルタを設計する。設計したフィルタに実際の重量信号を適用させた結果、30次で測定重量誤差0.1%(0.28gf)程度の高精度が得られた。

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© 1995 一般社団法人 日本音響学会
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