1996 年 52 巻 9 号 p. 703-710
筆者らは心疾患などの循環器疾患の非侵襲的な診断を目指している。心疾患の検出において重要なパラメータとなる左心室内圧を測定する方法にカテーテル法がある。しかしこの測定法では, 心臓にカテーテルを挿入しなけれぱならないため, 簡単に繰り返し測定を行うことができない。そこで本稿では心筋弾性値を求める Mirsky の方法と弾性球殻の弾性値を求める方法を結びつけることにより, 心臓の内径・壁厚・心振動の固有振動数から心機能診断上重要である左心室拡張末期圧を非侵襲的に推定する新しい方法を提案する。また, イヌの摘出心臓の心振動の時間-周波数解析によって本手法の定量的評価を行った結果, 数mmHg の精度で左心室拡張末期圧が得られることを示す。