1998 年 54 巻 3 号 p. 190-198
筆者らは, 知覚的な音の階層的な内部像を構築するために, これまでに音楽情景分析の処理モデルOPTIMAを提案し, その実験システムを実装した。しかしながら, そのシステムは認識率の面で実用的とは言えず, その改善が課題となっている。OPTIMAは, 複数の処理モジュールからの出力を統合して外界の最尤推定像を得る枠組であるため, 処理モジュールの追加によって認識精度の向上を図ることができる。本稿ではまず単音の遷移に注目し, 単音の遷移に関する統計的分析を行って知識源を構成した。次に, 単音の遷移に関する確率値を与える処理を提案した上で, OPTIMAに追加した。評価実験の結果, 単音の認識誤りの訂正に成功し, 処理の有効性を示すことができた。