日本音響学会誌
Online ISSN : 2432-2040
Print ISSN : 0369-4232
知覚モダリティを超えて : 視知覚に及ぼす聴覚の効果(<小特集>聴覚と脳)
下條 信輔シャイア クリスチャンニジャワン ロミシャムズ ラダン神谷 之康渡辺 克巳岡田 美苗柏野 牧夫
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2001 年 57 巻 3 号 p. 219-225

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抄録

聴覚刺激による視知覚の変容に関する三つの新しい発見を概説する。第1に, 視覚的な時間分解能は, 音が付随すると, 視聴覚刺激の時間系列及び遅延に依存して, 向上もしくは低下する。第2に, 単一の視覚フラッシュは, 複数の音と共に提示されると, 複数のフラッシュとして知覚されることがある。第3に, 互いに近づくように動く二つの物体からなる多義的な運動パタンは, それと同期していない音が鳴っても, あるいは音がなくても, 二つの物体が交差してまっすぐ動いていくように知覚されるが, 二つの物体が重なった時点に同期して音が鳴ると, それらの物体が衝突して反発するように知覚される。これらの発見に基づいた著者らの主張は, 従来信じられてきた視覚優位性に反して, 聴覚が強力な過渡的信号を与える場合には特に, 聴覚が視覚を変化させるというものである。

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© 2001 一般社団法人 日本音響学会
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