鳥類における有毛細胞の再生現象が発見されて10年を超えたに過ぎないが, すでにこの発見により脊椎動物の聴覚系に関して新たな研究テーマが幾つも派生してきた。ヒトが発話の音声を学ばなければならないのと同様に, 鳥類もまたコミュニケーションに使う複雑な種特異的音声を学習せねばならないことから, 鳥類における有毛細胞の再生現象は更に興味深い研究課題となる。このような課題の一つとして, 聴覚障害と音声産出の関係がある。また, 聴力の回復に伴う音声行動の変化も重要なテーマである。この論文の目的は, 鳥類における有毛細胞の喪失がどのような機能的及び行動学的結果をもたらすかについての知見をレビューし, ヒトの聴覚障害を理解する上での妥当性を指摘し, 将来の研究方針を探ることにある。