2001 年 57 巻 5 号 p. 326-336
本論文では, 音声をホルマント周波数に基づいて単共振波に分解した後, 各成分を圧縮処理し加算することによって高品質音声を得る補聴器の方式を提案する。この補聴器では入力音声のホルマントを中心とする成分のみが利用者の可聴野に入るよう圧縮するので非線形歪の少ない音声を合成できる。単共振成分に乗ずる振幅圧縮係数はその成分のフレーム実効値と聴力特性から算出する。本稿では振幅圧縮の原理及び実機シミュレートされた方式を述べ, 次に多数の単語音声から調べたホルマントピークレベルの分布と本方式による振幅圧縮の効果を検討する。最後に本方式の有効性を健聴者による模擬難聴状態での聴き取り実験を通して立証する。