2002 年 58 巻 3 号 p. 173-179
本論文は,クラリネットの物理モデルを用いた発音シミュレーションを高速に実現する方法を提案している。そこでは短く区切られた時間ステップごとに,過去の発生音場を反射関数と重畳させて現時刻の発生音場を求める。この重畳積分の計算には非常に時間が掛かる。そこで本論文では,指数関数から成る要素波を組み合わせて反射関数を近似する方法を提案する。この方法によって重畳積分を数個の積和で計算することが可能になる。反射関数を近似することにより合成音には誤差が生じる。要素波の数を増すことにより誤差は減じるが,計算時間が増える。10個程度の要素波を用いると,計算量は20分の1程度になる。