水平面上の頭部伝達関数の距離依存性について数値解析を用いて詳細に検討した。レーザスキャナとMicro CTスキャナを用いて得られた頭部コンピュータモデルに境界要素法に基いた数値解析を適用し,3.0m以下の距離に配置された点音源及び面音源に対する頭部伝達関数を算出した。頭部中心だけではなく外耳道入口を原点とした座標系にしたがって音源距離及び方向を変化させることで,頭部伝達関数のスペクトル特性の比較を行った。その結果,受聴耳側の音源に対する頭部伝達関数の距離依存性は主に外耳道入口への入射角の変化によること,受聴耳と反対側の音源に対する頭部伝達得関数の距離依存性は頭部の影響によることが明らかになった。また,耳介の襞の裏側に音源がある場合には遠方の音源に対しては見られないディップが生じるなど,耳介の極めて近傍のHRTFの特性が明らかになった。