日本語を学習する中国語話者と母語話者の朗読音声のF_0パターンの形状を観察し,文中の文節ごとのレンジの推移を,正規化F_0の最大値,中央値,最小値により表現し,両者の違いを明らかにした。また,韻律に着目した母語話者の主観評価の結果と音響分析の結果の関係をパターンによって段階的に示した。母語話者は,統語的,意味的まとまりを韻律的1単位として扱い,なだらかな丘状のF_0パターンと共に,文節ごとにF_0最大値を調節し,大小のレンジ変化をつけ音響的に表現している。一方,中国語話者は,個々の文節を韻律的1単位として処理しており,文節ごとに急峻で直線的な形状,画一的なレンジの広さ,文末のF_0の下降不足等の特徴が見られた。中国語話者は,F_0パターンのなだらかな上昇下降の形状,レンジの適切な調整を学習する必要があることが分かった。