エレクトリックギターに用いられる電磁型ピックアップは,直流偏倚磁束による吸引力の負スチフネス成分により弦振動に非調和性を発生させ,部分音同士の干渉により唸り現象を引き起こす。マグネットの吸引力は弦の張力に対し微少であり,弦の振動周波数や変位への影響は強くはないものの,この非調和性による稔りは,明らかに聴感上感知できるものである。一方,弦に集中質量が付加された場合においても非調和性が発生するが,部分音次数に対する非調和特性が異なり,質量と付加位置の選定によっては,負スチフネスによって生じる非調和性を弱めることが可能となる。本論文では,理論的解析と実測による検証を通してこのことを明らかにしている。