学校メンタルヘルス
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高校生の犯罪不安と防犯意識に関する研究 : 高校生版犯罪不安尺度及び防犯意識尺度開発の試み
藤井 義久
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2009 年 11 巻 p. 9-22

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抄録

本研究の目的は,犯罪不安と防犯意識の視点から,犯罪不安社会に生きる高校生の心理状態について検討することであった。調査対象者は,高等学校5校の生徒806名(男子416名,女子390名)であった。まず,項目分析及び因子分析によって,「不審者に対する不安」,「外出に対する不安」,「1人になることに対する不安」という3つの下位尺度,計25項目から成る「高校生版犯罪不安尺度」を開発し,本尺度には一定の信頼性,妥当性のあることを確認した。そして,その尺度を用いて,犯罪不安水準は一般に女子の方が高いこと,犯罪不安は学年が上がるにつれて男子は徐々に下がり続けるのに対し女子は逆に徐々に上昇するといったように男女間で発達的パターンに違いの見られることなどを明らかにした。また,数量化I類の結果,特に,日々の親の言動が高校生の犯罪不安水準と密接に関連していることがわかった。次に,「犯罪不安」と同様の手続きにより,「外出時における防犯意識」,「不審者に対する警戒意識」,「家庭における防犯意識」,「危険回避行動」,「自己防衛意識」という5つの下位尺度,計22項目から成る「高校生版防犯意識尺度」を開発した。そして,その尺度を用いて,犯罪不安と同様に,防犯意識も一般に女子の方が高いこと,防犯意識においては学年差は見られないことなどについて明らかにした。最後に,犯罪不安と防犯意識との関連性について検討したところ,両者は密接に関連していて,防犯教育等において犯罪不安をある程度高める指導を行うことが防犯意識向上につながることが示唆された。

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© 2009 日本学校メンタルヘルス学会
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