学校メンタルヘルス
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教育実習を控えた大学生の楽観性が直接的またはストレッサー,コーピングを介して間接的に抑うつに与える影響 : 共分散構造分析による因果モデルの検討
川人 潤子大塚 泰正
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2010 年 13 巻 1 号 p. 9-18

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抄録

本研究の目的は,教育実習を控えた大学生の楽観性,ストレッサー,コーピング,抑うつの因果モデルを検討することであった。2009年4月に,教育実習を控えた大学生411名(男性175名,女性234名,無記名2名;平均年齢19.3歳,標準偏差0.6歳)は,楽観性(日本語版改訂版楽観性尺度;LOT-R),ストレッサー(大学生用ストレス自己評価尺度;SSRS),コーピング(日本語版Brief COPE尺度),抑うつ(自己記入式抑うつ性尺度;CES-D)に関する質問紙に回答した。共分散構造分析の結果,楽観性の高さは,抑うつの低さへ直接的に影響することが明らかになった(β=-0.19,p<0.01)。さらに,楽観性の高さは,ストレッサーを介して間接的に抑うつの低さに影響した(β=-0.22:-0.34×0.64)。また,接近コーピングの実行頻度の多さは,抑うつの低さへ直接的に影響する傾向が認められた(β=-0.08,p=0.08)。一方,ストレッサーの高さと回避コーピングの実行頻度の多さは,抑うつの高さへ直接的に影響することが認められた(ストレッサーから抑うつへの影響:β=0.64,ρ<0.01;回避コーピングから抑うつへの影響:β=0.15,p<0.01)。以上から,楽観性が高ければ,ストレッサーを脅威と知覚する傾向が抑えられ,結果として抑うつを改善させる可能性が推察された。そのため,教育実習を控えた大学生に楽観性を高める介入プログラムを実施することは,精神的健康を維持するために有益であるといえる。

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© 2010 日本学校メンタルヘルス学会
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