学校メンタルヘルス
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大学生の対人恐怖心性とライフイベントとの関連性―6ヶ月間の短期縦断データによる検討―
鎌倉 利光塩澤 聖子
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2012 年 15 巻 2 号 p. 233-242

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抄録

本研究は,大学生を対象とした短期縦断データを用いて,大学生の対人恐怖心性とライフイベントとの関連性について検討することを目的とした。そこで大学生129名を調査対象とし,対人恐怖心性尺度と大学生用のライフイベント尺度を用いて,約6ヶ月の間隔で2回の追跡調査(第1回目の調査をTime 1,第2回目の調査をTime 2とする)を実施した。

本研究の主な結果として,対人恐怖心性と対人領域,達成領域を含めたネガティブライフイベントとの間に有意な正の相関がみられた一方で,対人恐怖心性と対人領域,達成領域を含めたポジティブライフイベントとの間には有意な負の相関が見出された。また,交差時差遅れモデルによる分析の結果,Time 1における対人恐怖心性がTime 2における達成領域に関するネガティブライフイベントに対して時系列的に有意に寄与していることが明らかにされた。

短期間の縦断データを用いることにより得られた本研究の結果に関して一般化するためには,今後長期間の縦断データに基づく研究が必要であると考えられる。以上の限界点が残されているが,本研究は,これまでに検討されてこなかった対人恐怖心性とライフイベントとの関連性に関して明らかにしたという意義があるといえよう。そして,本研究の結果から,特に大学生の対人恐怖心性の高さと関連するネガティブライフイベントに配慮した対応について検討することが必要ではないかと考えられる。

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© 2012 日本学校メンタルヘルス学会
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