システム農学
Online ISSN : 2189-0560
Print ISSN : 0913-7548
ISSN-L : 0913-7548
研究論文
東北タイ砂質土壌地域における乾季の土壌水分動態
小田 正人小倉 力
著者情報
ジャーナル フリー

2008 年 24 巻 1 号 p. 57-64

詳細
抄録

東北タイ、コンケン県内の近接する2つの小流域において、2005年から2006年にかけての乾季に、地下1mまでの土壌水分をプロファイルプローブ(Delta-T Devices社PR-1)を用い、総計76地点でモニタした。観測地点では10月から乾季に入り、11月に時期はずれの30mm程度の降水があったが、観測期間中は1mm以上の降水はなかった。両小流域の地下1mまでの平均土壌水分量は、12月初旬で132 mm、2月初旬で109 mmであった。見かけ上の減少量23mmは、この期間の蒸発ポテンシャル324mmより大幅に小さかった。土壌水分は観測点により大きな違いがあったが、小流域の谷線方向および横断方向、いずれも標高による地形の影響は明瞭でなかった。一方、植生の影響は大きく12月の植生別土壌水分量は、森林25、休閑畑(雑草)79、キャッサバ96、サトウキビ131、休閑田(雑草)147、水稲後(ほぼ無植生)163mmであった。また、2月までの減少量は、森林3、休閑畑(雑草)19、キャッサバ30、サトウキビ26、休閑田(雑草)28、水稲後(ほぼ無植生)18mmであった。土層別の分布についてみると、一般に深い層ほど水分が高かった。ただし森林は例外で、地表から地下1mまで水分分布が均質であった。これは観測開始時点ですでに乾燥しきっていたためと考えられた。そこで、森林土壌の水分22mmは無効水分と仮定すると、調査サイトにおける12月初旬時点の利用可能水分量は、水稲後で141mmあると推察された。蒸散係数はトウモロコシで約100、一般の作物では200~500とされている。141mmの水分は、トウモロコシで約1.4、一般作物で0.7~0.3 kg・m-2の乾物生産が可能な量である。

著者関連情報
© 2008 システム農学会
前の記事 次の記事
feedback
Top