本研究では、著者らが開発してきた光合成・不稔型穀物生産モデルについて、光合成影響関数の相違が水稲の単位面積収量に及ぼす影響を検討した。地球温暖化の進行を考慮し、本モデルは、気温が高く且つ日射も十分にある場合に、光合成に及ぼす日射影響関数の過大な推定が光合成速度と収量を過大に評価する懸念を改良するものである。これまで採用してきたMichaelis-Menten(MM)型は、小麦やトウモロコシの光合成影響関数に適し、水稲の場合には日射が不十分な凶作の場合に有効な光合成日射影響関数である。しかし水稲の場合には、日射が十分に大きくなくとも、光合成速度が上限の一定値に近づく性質を持つ。この性質を表わすPrioul-Chartier(PC)型日射影響関数に改良した場合について、穀物生産予測に及ぼす影響をMM型と比較検討した。PC型モデルの適用によるとMM型がCO2固定速度を約1割の過大評価をしていることが判った。しかし、標準化した光合成速度PSNUと収量予測のための穀物単収指標CYIU(Unit Crop Yield Index)への影響は、無視できることも判った。また、従来は水稲の作況指数についての予測であったが、単位収量による表示にモデルに改良し、信頼性を改善したので報告する。