システム農学
Online ISSN : 2189-0560
Print ISSN : 0913-7548
ISSN-L : 0913-7548
研究論文
定点カメラ画像による水稲の生育状況の推定
高田 英治井上 晃宏芝山 道郎坂本 利弘守田 和弘木村 昭彦高橋 渉
著者情報
キーワード: , FFT, NDVI, 生育状況, 定点カメラ
ジャーナル フリー

2009 年 25 巻 1 号 p. 27-34

詳細
抄録

近年、日本では農業従事者人口の減少と高齢化が進む一方、都会からの定年帰農(U ターン)や新規就農により比較的経験の浅い農業従事者が増加することも予想される。本研究においては、圃場に設置した定点カメラによるリモートセンシングを通じて効率よく稲の生育状況を把握し、農業従事者へ情報を堤供するシステムを開発することを目的とした。 測定システムは近赤外バンド(中心波長860nm)及び赤バンド(中心波長650nm)の2 つのバンドでデジタル画像を撮影するカメラと太陽光の分光放射強度監視のためのセンサからなり、富山県農林水産総合技術センター内の水田圃場を対象として移植後から収穫期まで継続的に測定した。分光反射率に変換した画像からNDVI の季節変化を計算し、併行して実施した人手による調査データと比較した。カメラ設置方法として太陽を背にし、斜め下方を撮影するかたちとしたため、定点カメラから測定されたNDVI は、実測の草丈×SPAD 値よりも生育の初期段階においては、より速く増加する傾向が見られた。今後、カメラの観測方向および照明条件についてさらに検討する必要がある。一方、同じく分光反射率に変換した定点カメラ画像を二次元高速フーリエ変換(FFT)処理した結果と調査データとを比較したところ、FFT 処理後の画像中の特定の周波数領域における平均画素値の推移が、最高分げつ期前までの草丈の推移とよく一致していた。定点カメラ測定は、NDVI のような分光学的指標の推定に加えて、画像パターンの特徴変化から生育状況を推定する手段として有効であると推察された。

著者関連情報
© 2009 システム農学会
前の記事 次の記事
feedback
Top