畜産経営由来の環境負荷低減と家畜排せつ物の有効利用促進のために、1999 年に「家畜排せつ物の管理の適正化及び有効利用に関する法律」が成立し、2004 年に本格施行された。この結果、急速に堆肥化施設の設置が進んだが、本法施行前後において堆肥の流通がどのように変化したのかは明らかにされていない。そこで本論では畜産が盛んな兵庫県を分析対象として、1995年から2005年にかけての堆肥流通の変化を統計資料によって推計した。この結果、本法施行前後で多くの地域のリサイクル率に上昇が見られ、兵庫県全体ではリサイクル率が37%から52%に上昇していると推計できた。しかし畜産が特に盛んな地域におけるリサイクル率の上昇は25%から35%にとどまっており、農地への過剰施用が続いていることが示唆された。このような地域において、今後さらなる政策的対応が必要であると考えられる。