2009 年 25 巻 1 号 p. 71-78
ベトナム中部Sam - An Truyenラグーンに位置する漁村において、1)漁場利用の変遷と漁場管理の状況を把握すること、2)沿岸域の漁場環境を把握することを目標に、聞き取り調査と底質の酸揮発性硫化物量(AVS)により、空間的、季節的な漁場環境の変化を調査した。現在利用されている養殖漁場は元来、水田とエリ網漁場として利用されていた。内陸及びラグーンの水辺に位置する水田は養殖用のアースポンドに転換され、エリ網は、さらにその周囲に網を設置した囲い込み網養殖場となった。養殖漁場用地の獲得形態は、コミューンからの割り当て、家族・親戚等からの相続、他の所有者からの購入、借地利用等多様であった。養殖漁場や周辺のラグーンの底質環境は、養殖の始まりと共にAVS量が増加し、養殖後期には養殖個体にとって危険なレベルの値が観測された。また、ラグーン内の養殖場の位置によりAVS量の違いが見られ、潮通しの良いところでは、底質表層でAVS量が低いことが見出された。また、聞き取り調査より、近年養殖種における病気の発生頻度が上昇していることが明らかになった。