システム農学
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研究論文
家畜生産システム内の循環性評価における循環指標の検討
田端 祐介広岡 博之
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2009 年 25 巻 2 号 p. 93-102

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抄録

家畜生産システム内における資源循環は、飼料自給率の向上および家畜ふん堆肥の利用を促進するために重要である。システム内の資源循環を検討するためには、まず、その循環性を数値化することが必要である。近年、家畜生産システム内の循環性評価に生態学分野の循環指標が導入され始めている。この指標は家畜生産システムに適用可能であり、循環性の評価に有用と考えられる。そこで本研究では家畜生産システムに導入した循環指標の特性を検討した。循環指標はシステムの総フロー量に対する循環フロー量の比率で表される。その数値は0 から1 で表され、0 が全く循環しない状況を、1 が系内の全ての物質が循環する状況を示している。循環性の評価例として、既報の酪農および肉牛生産における生産システムの元素循環を循環指標で表した。次に、循環指標に対するモデルの影響を検討した。まず、家畜生産システムへの入力が、人為的搬入のみの場合と天然供給も含む場合があることを踏まえ、両者における循環指標の相違を検討した。その結果、人為的搬入のみの場合では天然供給を含む場合よりも循環指標が高く算出されることが示唆された。さらに、家畜、堆肥、土壌など複数の要素(部門)から構成される家畜生産システムにおいて、同じシステムを異なる部門数で表した場合の循環指標を算出し、部門数の異なりが循環指標にどのように影響するかを検討した。検討は2~5 部門からなる同じシステムについて行い、結果としてフロー経路が変わらなければ部門数は指標に影響しないことが示された。本研究で示唆された循環指標の特性は、家畜生産システムにおける循環性の理解や循環指標の事例間比較において有益な情報になると考えられた。

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© 2009 システム農学会
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