システム農学
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研究論文
酪農における環境影響の経年的変化のライフサイクルアセスメント
築城 幹典齋藤 弘太郎前田 武己
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2009 年 25 巻 4 号 p. 185-194

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抄録

農林水産省が行っている牛乳生産費調査の個別結果表データを用いて,北海道および都府県の酪農による環境影響の経年的変化をLCAを用いて評価した。入手可能であった1979年から1992年までの14年間のデータを用い,地球温暖化,酸性化および富栄養化について,生産牛乳1トンを機能単位として評価した。評価範囲は化学肥料・農薬・資材・機械・施設の製造,購入飼料および自給飼料の栽培,飼養管理,排せつ物処理である。また,推定された地球温暖化負荷,酸性化負荷,富栄養化負荷を目的変数,個別結果表の飼料費,敷料費,光熱水料および動力費,建物費,農機具費,搾乳牛頭数,乳量を説明変数とする重回帰式を作成し, 1993 年から2006 年までの環境影響を推定した。調査期間中の1 戸当たり乳量はほぼ一貫して増加していた。生産牛乳1 トン当たりの地球温暖化負荷については,北海道と都府県の間で大きな差はなく,1982年以降は低下したが1997年以降はほぼ一定の値となった。1992年までの生産過程別構成割合では,ルーメン発酵および購入飼料の割合が高く,化石燃料(北海道,都府県)と購入飼料(北海道)に割合増加の傾向が見られた。酸性化負荷については,都府県の方が北海道よりも高く,その変動は他の環境影響項目に比べ小さかった。1992 年までの生産過程別構成割合では,購入飼料および堆肥化・圃場の割合が高く,化石燃料(北海道,都府県)と購入飼料(北海道)に割合増加の傾向が見られた。富栄養化負荷については,1979 年では北海道の方が都府県よりも高かったが,以降差が縮まり,1992 年以降では差が無くなっていた。これらの結果から,1 戸当たり頭数増,遺伝的泌乳能力の向上や飼料品質の改善,ルーメン発酵によるメタン発生量の低減,自給飼料や副産物利用促進による購入飼料の削減および環境負荷物質発生の少ない堆肥化手法の利用などが,環境影響低減に有効であると考えられた。

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