システム農学
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研究論文
食品副産物を用いた肉牛肥育生産のライフサイクルアセスメント
築城 幹典佐々木 綾美近藤 恒夫東山 雅一村元 隆行雑賀 優
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2009 年 25 巻 4 号 p. 195-203

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抄録

食品副産物など地域内で生産された自給飼料を用いた日本短角種の肥育生産を,輸入飼料を主体とした配合飼料を用いた場合と比較した。食品副産物としては,リンゴジュース絞り粕とナンブコムギのフスマを取り上げた。各種飼料の栽培,輸送,加工過程および家畜の飼養段階などでの化学肥料,堆肥,化石燃料や電力の使用量などから,各環境影響物質の排出量を求めた。環境影響の項目として,地球温暖化,酸性化および富栄養化を取り上げた。リンゴジュースと絞り粕および小麦粉とフスマとの間の環境負荷の配分は,経済的価値に基づいて行った。飼料生産および肥育の機能単位は,可消化養分総量1 トンおよび増体量1kgとした。地球温暖化負荷および酸性化負荷は,配合飼料区の値が高かった。これは,輸入飼料輸送過程での化石燃料の消費による。リンゴジュース絞り粕の火力乾燥に用いられた化石燃料が,地球温暖化負荷および酸性化負荷を高めていた。牧草サイレージおよびリンゴジュース絞り粕で富栄養化負荷が高かったが,これは栽培過程における堆肥および化学肥料の多量施用によるものであった。本研究から,地元で生産可能な食品副産物を有効に利用することで,地球温暖化負荷および酸性化負荷を引き下げることが明らかとなった。また,適正な量の化学肥料および堆肥の施用が,富栄養化負荷低減に重要であることが示された。

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© 2009 システム農学会
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