システム農学
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研究論文
中国内モンゴル自治区における農業生産構造の規定要因に関する研究
長命 洋佑呉 金虎
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2011 年 27 巻 3 号 p. 75-90

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抄録

近年、中国内モンゴルでは、急速な経済発展により、畜産物の消費が増加するとともに農業生産構造の変化がみられるようになった。そうした変化は、農牧民所得における所得格差を拡大させることとなった。本研究では、(1)2000 年および2007 年における内モンゴルの農業生産構造の変化を明らかにする。(2)農業生産構造が農牧民所得に及ぼす影響を明らかにする。(3)これらの結果をもとに、今後の展望について言及する。分析対象地域として、牧区(33 地域)および半農半牧区(37 地域)の2 地域を取り上げた。分析では、土地、労働、資本および農畜産物の生産力に関する44 変数からなる4 つの概念を用いて、それぞれに対し主成分分析を行った。次に、主成分分析により産出された主成分得点を用いて、パス解析を行い、農牧民所得に対する影響を明らかにした。パス解析では、土地、労働、資本に関する主成分は説明変数として、農畜産物生産力に関する主成分は媒介変数として用い、農牧民所得に対する影響を明らかにした。分析の結果、2000 年から2007 年にかけて、農牧民所得の増加がみられたものの、所得増加は所得格差の拡大をもたらしていた。第二に、半農半牧区において、経済性の高い穀物や家畜の生産が農牧民所得に影響を与えていた。特に、農牧民所得に対する影響は、山羊や綿羊などの小家畜から肉用牛や乳用牛などの大家畜へと変化していた。第三に、牧区では、2000年から2007年にかけて農業生産構造がより複雑化していた。この結果は、「生態移民」政策や「退耕還林・還草」政策に関する補助金など、農業生産以外の要因の重要性を示唆している。

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