システム農学
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研究論文
西アフリカ・サヘル地域の村落において外部技術の導入経緯がその後の普及状況に与える影響
佐々木 夕子伊ヶ崎 健大田中 樹真常 仁志飛田 哲
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2012 年 28 巻 2 号 p. 73-83

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抄録

西アフリカ・サヘル地域は、砂漠化の最前線として知られ、国際機関や多くの援助機関が様々な側面から砂漠化問題に取り組んできた。近年は住民参加の要素も取り入れてはいるものの、未だに顕著な成果は上がっていない。砂漠化対処技術を地域に普及するためには、技術が地域住民にとって実施可能であるのはもちろんのこと、導入後も住民による技術の継続を可能にする導入方法も欠かせない。このような認識に立ち、サヘル地域で砂漠化対処技術を普及する際に適した導入方法を明らかにすることを目的とする調査を行った。共同研究者らが開発した「耕地内休閑システム」という技術が、ほぼ同時期にニジェール南西部の二地域に異なる方法で導入された事例があった。「耕地内休閑システム」とは、風食抑制効果と作物の増収効果を併せもつ砂漠化対処技術である。一つ目の地域では、従来サヘル地域で頻繁に行われてきた外部者が主導する住民集会による導入方法が、二つ目の地域では、住民との対話を通した導入方法がそれぞれ採用された。ここでは前者をトップダウン型の住民参加型アプローチ、後者をボトムアップ型の住民参加型アプローチと呼ぶ。異なる導入過程を経たその技術に対する地域住民の評価や定着状況を比較し、その背景や理由を考察した。「耕地内休閑システム」に対する両地域の住民の評価は概ね高かったものの、トップダウン型の導入方法では住民による技術の継続は見込まれないことが明らかとなり、対してボトムアップ型の導入方法では、住民の長期に渡る技術の継続に期待が持てる結果となった。また、たとえ住民の技術評価が高くても、導入方法によっては技術が地域に定着しないことが明らかとなり、長期的な技術の継続を可能にする導入方法として、地域住民の情報伝播を内包するボトムアップ型の住民参加型アプローチが有効であることが示唆された。

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