システム農学
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研究論文
重回帰分析とGISを用いたバングラデシュのコメ生産適地評価手法の定量化
山本 由紀代越智 士郎小林 慎太郎古家 淳KABIR Md. Shahjahan
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2013 年 29 巻 1 号 p. 1-9

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抄録

環境の変化に対して脆弱な発展途上地域では、気候変動に伴う影響評価と対応策の確立が急がれている。途上国の農業は自然条件に強く依存するため、栽培に適した土地条件と気象条件を有する地域において生産量が多いと考えられる。気候変動が栽培適地に及ぼす影響を評価するには、土地条件に由来する潜在的な適地性を面的かつ定量的に把握しておく必要がある。そこで本研究では、重回帰分析とGIS を適用し、6 種類の土地条件(傾斜、地形区分、土性、排水性、土壌透水性、土壌塩分)に基づいてバングラデシュにおける雨季作米Aman ならびに乾季作米Boro の適地性を定量的に評価するための手法開発を試みた。郡に相当する463 行政区(Thana)毎に、上記6 種類の土地条件を表す26 属性区分の面積を求め、これを説明変数とし、2002-2003 年期のAman 及びBoro の生産量(統計値)を目的変数とする重回帰分析を行った。さらに、得られた偏回帰係数を属性値に代入して地図演算を行い、適地性の量的指標となるピクセルあたりの推定土地生産量を算出した。作成した重回帰式の自由度調整済み決定係数はAman が0.903、Boro が0.823 と高く、ピクセルあたりの推定土地生産量を新旧の県区分で集計した結果においても一定の精度が保たれたことから、各ピクセルへの生産量の配分は合理的なものであることが認められ、適地性の定量的な指標になりうると考えられた。適地評価では地形区分や土壌類型などの質的情報を評価要因として用いる場合があるが、本提案手法では、統計単位である行政区毎に各属性区分の分布面積を集計し、これを説明変数とすることで量的変数として取り扱っている。統計情報と地図化されたデータがあれば同様の手順で変数として取り込めるため、モデルの拡張性や汎用性が高い。

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