システム農学
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研究論文
福島原発事故後の買い控え被害賠償対象地域産農産物に対する消費者購買意思
-千葉市若葉区内の町会長を対象として-
朴 壽永武井 敦夫
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2013 年 29 巻 3 号 p. 93-99

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抄録

本研究では、福島原発事故から1 年となった現時点において、千葉市若葉区内町会長達を対象に、買い控え被害賠償対象地域のうち福島県、茨城県、千葉県産農産物、さらに、茶のみ賠償対象地域に指定された神奈川県と静岡県産農産物に対する購買意思を調査し、その要因及び買い控え被害対応策を分析した。その結果、原発事故発生地の中心から離れた地域産の農産物ほど購買意思が高くなる傾向が示された。また、千葉県産農産物に対する購買意思は非常に高く、賠償対象地域外の神奈川県と静岡県産よりも高かった。買い控え被害賠償対象地域産農産物の購買理由として、「売り場にある物は安全だと思うから」「産地を支援したいから」「売り場で検査してくれるから」の評価が高く、「安いから」は非常に低かった。千葉県産農産物への購買意思が非常に高かった理由として、回答者の地元である千葉県産に対する安心感や愛着が考えられた。福島県、茨城県、千葉県産農産物を買わない理由として、「放射能汚染の心配」が7 割を超え最も割合が高かった。賠償対象地域外の神奈川県と静岡県産農産物においても「放射能汚染の心配」という理由で買わない割合が5 割を超え、茶以外の農産物においても買い控え被害の影響のあることが示唆された。買い控え被害の対応策として、放射線量の測定と検査が高く評価された。売り場や国、流通業者・販売業者による検査が、農業生産者による検査より高く評価され、購買の最終段階まで安全が確認できる対応策を望んでいることが示唆された。安全性をアピールしたキャンペーンによる販売や農業生産者の顔が見える農産物の販売、安売りの評価は非常に低かった。

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