システム農学
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研究論文
さまざまな生産体系の酪農における環境影響の比較
リエラ 麻子日野澤 義子築城 幹典
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2018 年 34 巻 2 号 p. 29-40

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抄録

北海道および岩手県の生産技術体系をもとに、生産体系の異なる飼料生産を含む酪農の環境影響について、ライフサイクルアセスメント(Life Cycle Assessment, LCA)を用いて評価した。北海道の4種類(乾草、低水分牧草ロールサイレージ年3回刈り、放牧草、トウモロコシサイレージ)、岩手県の2種類(牧草ロールサイレージ年3回刈り、トウモロコシサイレージ)の飼料生産について、それぞれ3種類の施肥方法(化学肥料型、堆肥併用型、スラリー併用型)での環境影響を比較した。また、この結果を自給飼料生産の環境影響として加味し、北海道の4種類(40、60、100、400頭規模)、岩手県の2種類(40、100頭規模)の酪農体系について環境影響を比較した。評価項目は、地球温暖化負荷(Global warming load, GWL)、酸性化負荷(Acidification load, AL)および富栄養化負荷(Eutrophication load, EL)とした。飼料生産体系の機能単位はTDN1 kg当たり、酪農体系の機能単位は生産牛乳1,000 kg当たりとした。その結果、自給飼料生産時は有機質肥料を多用した施肥型において環境影響が高くなる一方で、酪農全体では、家畜排泄物の有効利用となるため、有機質肥料を多用した施肥型の影響が低くなることが明らかになった。酪農全体における北海道と岩手県との比較では、GWLで大きな差は見られなかったが、ALでは岩手県が高く、ELは北海道の方が高い結果となった。飼養頭数規模別では、生産規模が大きいほど環境影響は低くなるという結果が得られた。日本版被害算定型影響評価手法であるLIME2による環境影響の統合化の結果では、アンモニア由来のALの被害額が最も高かった。以上の分析結果から、酪農による環境影響は、家畜排泄物を自給飼料生産に有効利用するとともに、機械などの利用効率を高めることで軽減できることが示唆された。

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