システム農学
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研究論文
SPOT6衛星画像を用いた宮城県大崎市古川地域における屋敷林自動抽出手法の提案
三浦 祐未米澤 千夏
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2021 年 37 巻 4 号 p. 77-85

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抄録

屋敷林は、防風・防雪をはじめとして多様な役割を有し、平野部において生活する人々にとって重要な林の一つである。近年では、屋敷林による湿地生態系の保全機能が評価されている。しかし、屋敷林は全国的に減少傾向にあり、保全の重要性が指摘されている。本研究では、2017年12月に世界農業遺産に認定された宮城県大崎耕土に位置する古川地域を対象として、SPOT6衛星画像を用いたk-平均法による屋敷林抽出手法を提案する。5月上旬に取得された解像度6mのマルチスペクトル(MS)バンドとNDVI、MSバンドとテクスチャ特徴量、解像度1.5mのパンシャープンMSバンドとテクスチャ特徴量の3つのデータセットにk-平均法を適用した屋敷林の抽出結果を比較した。解析の結果、k-平均法による最適なクラスター数は7であり、各データセットにおける屋敷林抽出の総合精度は順に0.82、0.64、0.84であった。MSバンドとNDVIを用いた場合の屋敷林抽出の総合精度と、パンシャープンMSバンドとテクスチャ情報を用いた場合の屋敷林抽出の総合精度に顕著な差は認められなかったが、現存する屋敷林に対する抽出率は前者が0.71、後者が0.87であった。さらに、各手法において抽出された屋敷林の面積別の抽出精度に着目すると、屋敷林の面積が500m2未満の場合、パンシャープン画像の解析結果はMS画像の解析結果よりも屋敷林の抽出率が0.2以上高い結果となった。以上の結果により、大崎耕土において500m2以上の規模の大きい屋敷林分布把握は解像度6m程度の衛星画像に、小規模な屋敷林を対象とした、より詳細な屋敷林分布は解像度1.5mのパンシャープン画像にk-平均法を適用した手法が有効であることが示唆された。

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