抄録
【背景】日本放射線腫瘍学会が夏季に開催する「医学生・研修医のための放射線治療セミナー」では,2002年から実際の治療計画装置を用いた実習を行っているが,参加者の知識量による実習満足度の差が問題となっている.治療計画の臨床背景の理解に問題解決型学習(PBL)の形式を導入した.
【目的】本形式の有用性を探るべく,1)講義・実習満足度の前回との比較,2)PBLで提供しうる学習内容とその限界,3)本方法の教育者における有用性,について検討した.
【対象・方法】参加者計40名(学生25名,研修医15名)は人数所属に偏りなく,午前,午後各 7 班に分かれ,全国の若手放射線腫瘍医 1 名がtutorとして進行を補佐し,PBLを用いた臨床情報の導入から治療計画立案までを行った.アンケートから得られた満足度をスコア化し,学年別に検討した.
【結果】特に 5 年生以下で,講義理解度,実習への興味と理解度に有意な改善を認めた(p<0.05).不足する知識には放射線基礎医学が挙げられていた.tutor 14名中14名が自分の勉強にもなったと回答した.
【考察】低学年での満足度向上から本方式は学生実習に好適で,各大学が利用可能な実習教材を学会で整備することは,教育レベルでのがん診療均てん化につながりうる.また,教育者側の肯定的意見は,本方式が学生教育への積極的参加を促す可能性を含むと考えられる.