抄録
【背景】リンパ節初発の低悪性度早期非ホジキンリンパ腫に対する第一選択の治療は放射線照射とされているが, その至適照射野は確立されていない.様々な照射野を用いて治療を行なったので, その再燃率と生存率を報告する.
【対象と方法】1983年7月から1993年2月までに, リンパ節初発の低悪性度早期非ホジキンリンパ腫と診断され, 放射線単独にて治療された14名が対象である.このうち, 5名がinvolved field (以下IF) で, 4名がregional field (RF) で, 5名total lymphoid irradiation (TLI) にて照射された.
【結果】14名のうち, 8名は再燃なく生存中である (観察期間63-196ヵ月, 中央値116ヵ月).IFにて照射した5名のうちの2名, RFにて照射した4名のうちの2名, TLIにて治療した5名のうちの2名の計6名に再燃を認め, 全体の再燃率は14名中6名で約43%であった.IFにて照射後に再燃した2名の再燃部位は, いずれも照射野辺縁であったが, この2名は再照射により再度腫瘍消失して生存中であり, 初回治療時にRFやTLIなどの広い照射野を用いて治療していれば, 再燃せずに済んていたものと思われた.RFにて照射後に再燃したうちの1名は, 横隔膜対側の鼠径部に再燃しており, これも初回治療時にTLIにて照射していれば, 再燃せずに済んでいた可能性があった.TLIにて治療後に再燃したうちの1名は, 照射野のつなぎ目のミスによって生じた低線量域からの再燃であり, 本来は再燃せずに済んでいたものと思われた.もう1名は照射野内再燃であったが, 生検にて組織型がaggressive typeに変化していた.再燃までの期間はIFでは7ヵ月と19ヵ月, RFでは2ヵ月と65カ月, TLIでは35ヵ月と64ヵ月であった.初回治療時にTLIを用いて適切に低悪性度早期非ホジキンリンパ腫を治療した場合に期待される再燃率は, 14例中2例で約14%となり, しかも1名はaggressive typeへの変化例であった.組織がaggressive typeに移行した1名を除いて, 再燃後の治療で再度緩解を得ることができ, 生存率は100%あった.
【結論】照射野を広く設定するほうが, 再燃率が低く, 再燃までの期間が長い傾向が認められた.しかし組織型の変化が無ければたとえ再燃しても再度緩解を得ることが可能であり, 生命予後も極めて良好であった.