The Journal of JASTRO
Online ISSN : 1881-9885
Print ISSN : 1040-9564
陽子線治療の進歩と展望
辻井 博彦
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1994 年 6 巻 2 号 p. 63-76

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抄録

陽子線の最大の魅力は, ブラッグピーク効果により優れた線量分布を形成することであるが, 同時にその照射装置は既存の加速器に手を加えれば容易に利用出来るという利点も有している. 生物学的には光子線と同じ低LET放射線に分類されるが, これは, 従来から蓄積されている光子線の生物学的知識をそのまま利用できることを意味する.
陽子線治療はこれまで世界の16施設で行われ, 約1万3千人が治療された.適応疾患はまだ限られており, 70%以上が眼や頭蓋内小病巣で占められている.このうち30~40%は網膜メラノーマ, 約40%は頭蓋内の小病巣で, 他は頭頚部や前立腺などで, 胸腹部の深部癌はまだ少数である. 網膜メラノーマは, 陽子線により大線量照射 (70Gy/5回または60Gy/4回) が可能になってから, 眼球内制御率96%, 生存率80~88%という素晴らしい成績が得られるようになった. 頭蓋底・頚椎原発肉腫に対しては, 陽子線で65-75Gy (1.8Gy/fx) 照射することにより65~91%の5年制御率が報告されている.一方, 筑波大学では主に深部臓器癌を対象として, 肺, 食道, 肝, 膀胱などで良い成績を得ている.なかでも原発性肝癌に対しては, 陽子線治療が将来有効な治療法になるものと期待される.
以上の優れた臨床成績に刺激され, 新たに陽子線治療を行いたいという施設が急速に増えている.これは陽子線治療がコスト・ベネフィットの面からも十分に評価できる治療法であることを証明するものである.

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© 1994 The Japanese Society for Therapeutic Radiology and Oncology
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