行動経済学
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論文
恒常的所得ショックに対する家計の消費変化のパターン:日米比較
窪田 康平
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2010 年 3 巻 p. 18-38

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抄録

本稿の目的は,恒常所得のショックに対する消費行動の変化のパターンを尋ねた仮想的質問を用いて,家計の消費行動がどのような理論仮説と整合的かを調べることである.ライフサイクル・恒常所得仮説(LCPIH)によれば,人々は恒常所得の変化というショックに直面するとその時点で消費を変化させる.しかし,LCPIHと整合的な選択をした家計の割合は日本で1.6%,アメリカで3.9%にすぎない.家計が選択した消費のパターンには,家計間で多様性が見られる.多数派の家計は,日米ともに恒常的な所得が増加してもすぐに消費を変化させないと回答している.この消費経路の選択は,資産選好モデルと整合的である.また,恒常所得の変化に対して消費を徐々に変化させるという合理的習慣形成理論とも整合的な家計が多い.さらに,実際に借入制約に直面している家計において,借入制約の理論の予測と仮想的質問の選択結果が整合的であることが明らかとなった.

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© 2010 行動経済学会
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