日本気管食道科学会会報
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原著
気管空腸瘻発声の振動源と発声機構
長谷川 稔文木西 實毛利 光宏斎藤 幹天津 睦郎
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2001 年 52 巻 1 号 p. 17-23

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抄録

われわれは1988年より,咽喉食摘後に食物路の再建に遊離空腸移植を行うと同時に音声再建術として気管空腸瘻形成術を行いQOLの改善を目指してきた。気管空腸瘻発声を行っている10症例を対象とし,内圧測定検査を行い振動源を同定し,空気力学的検査を行い発声機構について検討した。内圧測定検査では基線上に振動波形が記録され,これを振動源とした。振動源は全症例で空腸内に存在し,その位置は症例間では異なっていたが,一例を除いて各症例でそれぞれ一定の位置であった。声の高さは複数の基本周波数が認められた。声の強さは平均75.8 dBSPL,呼気流率は平均129.6 ml/s,振動源下圧は平均18.6mmHg,振動源の抵抗は平均300.2dyne s/cm5であった。以上のことから,気管空腸瘻発声の振動源は蠕動によらない空腸内腔の形態的狭窄部であるといえる。気管空腸瘻発声の振動源の抵抗は,粘膜振動が得られやすいことと気管食道瘻発声のような新声門調節機構がないことから,気管食道瘻発声の新声門抵抗に比較して低値であった。これが気管空腸瘻発声の振動源下圧が気管食道瘻発声の新声門下圧の約半分であることに反映していた。空腸蠕動は振動源に影響を与え声の高さを変化させていた。

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